愛蝶会
 チャマダラセセリ Pyrgus maculatus は、北海道、本州の中部以北と四国に産するセセリチョウ科の蝶です。全国的に個体数が減少しており、環境省レッドリストの絶滅危惧T類に指定されています。四国においても香川県を除く3県に分布していましたが、愛媛県以外は絶滅したとされています。愛媛県においても最近は個体数の減少が著しく、現在確実に生息している地域は、松山市の石手川上流地域の一部のみとなっております。分類学的にも、四国産は亜種 shikokuensis として他の地域個体とは区別されている貴重な存在です。このまま放置しておくと絶滅する可能性が高いと考えられています。

成虫(夏型)
幼虫
卵、幼虫、蛹の写真は小松孝寛氏撮影
 
 成虫は年2回、3〜5月と7〜8月に発生し、蛹で越冬します。
幼虫は、バラ科のミツバツチグリやキジムシロ等を食草にしています。これらの草は栗畑や森林伐採地のように、人が手を加えることにより草原が保たれている所に生育します。
 
ミツバツチグリ キジムシロ
生息地(松山市米野町) 生息地(松山市米野町)
 
 松山市の山間部においては、よく手入れされた栗園が本種の良好な生息地となっていました。しかし、近年は農家の高齢化等により草刈り等の管理が行われなくなり、廃園あるいはスギ、ヒノキの植林地となり、本種の生息地は急速に狭められていきました。また、わずかに残った生息地においても、県内外から採集者が押し寄せ、個体数の減少に拍車をかける事態となっておりました。
 そこで、県内の蝶愛好家で組織する愛蝶会では、日本鱗翅学会、愛媛県総合科学博物館、愛媛大学農学部等と共同で、2002年からチャマダラセセリの保護活動に取り組んでおります。現在までに、保護地の設定、成虫、幼虫等の生息状況調査、母蝶から採卵し飼育した幼虫の放飼、草刈り、落ち葉掻きなどの環境整備、新聞等を通じた広報活動、採集自粛看板の設置等の活動を行っております。



採集自粛看板の設置 生息地での草刈作業
保全活動の打合せ 現地での調査の模様

 
チャマダラセセリがいなくなっても、蝶愛好家の方以外は何の関係もないかもしれません。しかし、一種類の生物がある地域から絶滅してしまうことは、人間の生存に関しても重大な変化が起きていることを意味しているかもしれないのです。
 このチャマダラセセリの保護活動を通じて、生物多様性を守ることの大切さ、里山の自然環境を保全することの意義を訴えていけたら、と思っております。

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